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けだもの系王子

第5章 結城、優男系?








「千尋?
どうしたのその目?
いつものでっかい目が腫れちゃて普通の目になってるよ?」





大学のキャンパス内で友達の芽以に声をかけられる。





「普通の目に見えるならいいじゃないの?」





ムスッとして芽以を見つめる。





じっと見つめる芽以の目こそ大きいくせに。





足を止めずに歩く。





昨日の激しい雨でアスファルトはまだ湿っている。




気をつけて歩かないと水溜まりがあるから。





「ねぇ、なんかあった?」





ギクリ。





あたしの背中が震える。





なんかあった。





どころの騒ぎじゃない。





枯れた筈の涙がまた目にたまりそうになって瞬きを繰り返す。





こんな、弱いのなんて、あたしじゃない。





「別に何もあるわけないし?」





「目が泳いでるよ〜」





からかうような視線とともに胸を揉まれる。





「ちょっとっ、芽以っ」





うりゃうりゃじゃないっ。





「恋でもした?」





「はあっ!?」





「絶対なんかあったね?
千尋の事はなんでも分かるよ?
男嫌いもついに克服かあ?」




耳に入るひそひそ話。




少し離れた所に男の二人組がいた。





「あいつだろ?
まじ胸でかっ?」




「AVのひろりんに似てるって?
あいつの方がでかくね?」




ひそひそ話と、やらしい視線。




こんなのは慣れている。




どんな服を着ても胸が強調される。




でも緩い服は太って見えるから、タイトな服装が多い。




「まじエロい体してんな?
やらせてもらえねぇかな?」




「バカ、怖い女軍団にいつも守られて怖いんだって!」




「まさかのユリか?」





笑い合ってる二人組。




まる聞こえですけど。





「あいつら腹立つなぁ、文句言いに行こうかっ?」





拳を握りしめる芽以。




学生時代からずっと空手部所属なんでしゃれになんない。




「やめなさい、もう大人なんだから」

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