けだもの系王子
第6章 要、優等生系?
居酒屋のバイトを増やした。
忙しくしてたらきっと疲れて眠れる。
大学とバイトの繰り返しの日々。
聖ちゃんからも逃げられるし一石二鳥だ。
いつの間にか暖かい季節になっていた。
5月の半ば。
バイトの帰りに良く来るお客さんにお酒を勧められて。
もう帰る頃だから少しくらいいいかなと思って飲んでしまっていた。
いつの間にかちゃんといつも通り電車で帰ってて、外の空気が気持ちいい。
星が綺麗。
月も綺麗。
満月じゃないけれど。
なんだかいい気分だった。
そっかぁ、お酒っていいかもしれない……。
寝不足も解消される。
だって、こんなに眠たいもの……。
「……藤谷、おい、藤谷……」
……………斉藤先輩?
優しく体を揺さぶられている。
ゆらゆら、気持ちいい。
瞼が開いてもトロンとくっついてしまう。
ちっという舌打ちの音。
「ここはまだ外だぞ?
家の鍵はどこだ?」
綺麗な顔立ち、長めの前髪から覗く艶やかな瞳が優しく揺れている。
男の人なのに綺麗。
うっとり見つめる。
「ズボンのポケットの中に……」
デニムの短パンのポケットに鍵がある筈だ。
ゴソゴソと先輩の大きな手があたしの腰のポケットの中に突っ込まれる。
「小さいポケットだな……キツい」
近い。
先輩が目の前にいる。
ドアの前にもたれて座ってたあたしの目の前で、一緒に座ってあたしのポケットを探っている。
ふわりとした、シャンプーの香りにくらくらする。
「んんっ……」
「……!
変な声、出さないでくれ……。
あった、これか?」
チャリン。
ポケットから鍵を取り出して先輩の体が離れるのに寂しくなる。
「……ほら、立てるか?」
片手を差し伸べられる。
立ち上がってる先輩の顔を見上げる。