
私の心の1番綺麗なところに
第23章 傷
警察署へ行き、
優貴が受付の人に内容を伝え
狭い部屋に通された。
私は優貴と並んで座り
灰色の机を隔てて
婦人警官が私の前に座った。
この時にはもう
私はどこか冷静で
婦人警官からの質問にも
落ち着いて答えられた。
襲われそうになった話も
混乱することも、泣くこともなく言えた。
道で男に会ったところから
話したが、私の話が終わったあとに
婦人警官が
「あなたは1人で彼氏さんの
家に向かったの?」
と、訊いた。
痛いところを突かれたと思った。
優貴も気まずそうな顔をしている。
「そうです。」
「こんな時間に?
自転車といえど、1人で?」
「…はい。」
まさかケンカして彼氏が私の
部屋を出て行って追いかけたなんて
言えない。
それを知ると婦人警官は
優貴を見る目が変わるだろう。
今の私のように。
よかったね、優貴。
あんたのプライド、
私は守ってあげたよ。
私1人、夜中に彼氏に
会いに行ったバカな女って
ことになったよ。
