
好きになったらダメだよ
第6章 最低同士だからいいんじゃない?
「来てくれたんですか?」
席に着いたら、メニューと水を持って伊都がやってきた。
みんなが騒ぐだけあって、黒服姿は様になっている。
髪も服に合わせて、前髪を斜めに分けてボリュームをつけ、ムースで固めている。
「すごいな。こういう服って作んの?」
橘が興味津々で伊都の黒服の裾をつかむ。
「いえ。今はディスカウントストアでけっこう安く売ってるんで。」
「へぇー。なぁ、あれ言ってみてよ。おかえりなさいませってやつ。」
「あー……」
伊都がスッと頬を染める。照れているサインだ。
「……おかえりなさいませ。ご主人様、お嬢様。」
伊都がお嬢様と言った瞬間、バシッと目が合った。
私を見つめる視線。
ギュッと心臓が締め付けられる。
……もう
無理……
「あ、あの私、用事思い出したから、職員室に戻ります!」
周りに生徒がいるとか分かっていたけど、足は駆け出していた。
