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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

悦史くんの告白から、二日後……

昼休み前の授業後……

化学の実験の後片付けをみんなでして、教室に戻る時、忘れ物に気がついて、理科実験室に一人で戻った。

誰かいた。

あれ?私が座ってた席に座ってる。

「……?彰一くん?」

「えっ?!市川???」

すごく慌てた様子。

「どうしたの?」

彰一くんに聞かれた。

「ノート、忘れちゃって……」

そう答えると、足元の台を手探りで触り、

「あ。これ?」

と、見つけてくれた。

「うん。ありがとう!」

笑顔で伝える。

「教室、戻らないの?」

「うんと……市川、俺さ、市川の幸せを心から願ってるよ。」

急にそんなことを言う。

「え?」

彰一くんの言葉がこだまする。

「市川の笑顔が俺にとって最高の癒しだ。」

「彰一くん……」

「俺は市川に彼氏にしてなんて言わないけど、この先もし、市川が困り果てるようなことがあったら、全力で力を貸すよ。いつでも、頼ってほしい。」

いつもどこか憎めない、彰一くん。

「ありがとう……」

「この先も、市川のこと、好きでいても良いかな?」

「うん……」

ドキドキ……

「握手させて?」

「あ、うん。」

右手を差し出すと、ギュッと少し強めに握って、

「幸せになれよ、市川。ずっと見守ってるよ。こんなに夢中にさせてくれて、ありがとう。」

と、言った。

「困ったら頼って良いからな?」

「うん。……ありがとう、彰一くん……。いざというときに頼れる人がいるって、とても心強いよ。」

二人とも、私を好きだったんだ。彼氏になりたいとか、そういう願いは持たずに、私の幸せを願ってくれるなんて……

なかなかできないことだなーって……思った。

握ってた手を放して、頭をそっと撫でてくれた。

そして、

「これからもずっと、大好きだよ。市川……」

そう言ってくれた。

すごく心に響く……告白だった。

「ありがとう……彰一くん。」

そう答えるのが精一杯だった。





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