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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

「ずっと……好きだった。市川が俺を見てないことくらい分かってる。市川は市川が思う道を行くのが一番良いと思う。だから付き合ってほしいとか、ムリなことは言わない。」

無口な悦史くんが話す。

ドキドキする……

「片想いで良い。好きでいても迷惑じゃない?」

「う、うん。」

手を握り直し、そして、もう一度、手の甲にキスをした。

「悦史くんッ!」

どうしたら良いか分からなくて…目を瞑る。

「可愛い…市川…。本当は!……でも、それは……しない。……好きだッ!」

チュッ……

また、手の甲にキスをする。

悦史くんの心の叫びを聞いて、目を開ける。

悦史くんと目が合った。

悦史くんは、とても切なそうな瞳で私をみていた。

ドキンッ!

見たことない、悦史くんの表情。

キスされた手が解放される。

その手が私の頭を撫でた!

「あっ…悦史くん…」

頭…撫でられるの…ドキドキする。

「可愛いよ、市川。幸せになれよ。」

そう言うと、私の頬に掌を当てた。

胸がキューーンとなる。

どうしたら良いか分からなくて、ぎゅっと目を閉じて俯いた。

「…あ、ありがとう、悦史くん……頑張るよ。」

やっとの思いでそう言った。

頬を包んだ掌はすぐに離れた。

「市川…」

「想ってくれてありがとう。」

「うん。あ!ごめんはなしね?虚しくなるから。」

「うん。」

紅茶を飲んで、悦史くんは、

「市川が入れてくれた紅茶、すっごくおいしいよ!」

褒めてくれた!

「ありがとう。」

想われるのは悪い気はしない。

でも、片想いで良いなんて……切ないなぁ。

他愛のない話をして、悦史くんは帰った。

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