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薔薇寮の淫

第8章 愛するという意味

・藤ヶ谷side

見つめ合う瞳と瞳、これからが正念場だ。

緊張感が漂う中、そう自分に言い聞かせると。

俺は北山の隣へソッと腰を下ろす。

ふと、前を見れば。

すっかり自分たちの世界に入ってしまっているニカと健永。

それに―

珍しくイチャついている、宮田とタマの姿が眼の中へ飛び込んで来る。

あいつら俺らのこと忘れてない?フッ

そして、その先には。

まるで様子を伺っているかの如く。

ジッと、こっちを見つめているわたの視線があったんだ。

しかし正直言って俺は。

この雰囲気の中でどうしたらいいのか、考えあぐねていた。

だってそうだろ。

人前で、いきなりおっ始めるなんて普通だったら出来っこないし。

ったくわたも無茶振りしやがってさ。

腹が立つったらありゃしない。

否応なく流れてしまう沈黙に焦りを覚え。

参ったな…

これじゃ奪い返すどころかタイムアウト宣告されそうじゃん。

と、そのときだった。



北「無理してるならしなくていいぜ」

藤「えっ」



北山が、とつぜん口を開いたのは。



藤「いや別に俺は」

北「始めに言っとくが俺の身体はすっかり横尾さんに開発されてしまってるんだ」

藤「‥‥っ」

北「抱けば直にそれが分かってしまう、そしたら気分だって悪くなるだろうし、複雑な心境にもなるだろ」

藤「おまっ」



気づかなかった。



北「んだからよ、悩んでるんだったらいっから」



そう言われるまで俺はそのことに。



北「ただ、これだけは言っとかなきゃ」

藤「なに?」

北「その今まで邪険にしてしまって悪かったそれから…あり‥がと」

藤「ちょ待った、お前どうしてそんな別れ際の挨拶みたいなこと言ってるんだよ」



つうかまた眼を合わせようとしないし。



北「んだってみたいなもんだから、クッ」

藤「北山?」



が、そのとき俺はこいつの身体が小刻みに震えているのに気づいてしまう。





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