今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡
第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚
明智氏は渚くんよりもはるかに歳上であるにも関わらず、大人気なく不機嫌な形相でアタシに向かい威圧的に佇んでいる。
そこそこ素敵なお顔にカチッときめられた洒落たツーブロックのオールバック。インテリジェンスな縁なしメガネの奥から鋭く眼光を光らせ、その姿は見るからにお堅くTHE・仕事のできるオトコそのものだ。
でもね、その眉間の皺…半端ないから。その顔で鬼対応とか…さ、なんて勿体無い。
…とか、それこそ今はどうでもいい。ひ、怯むなアタシ!!
「こ…こちらでよろしかったですか」
「………」
少々たどたどしくも、笑顔を保ったままA4サイズがすっぽり収まった分厚い茶封筒を彼へと差し出す。
すると早速中身を確認し始める明智氏。渚くんに負けず劣らず披露される洗練された所作を眺めながら、こんな鬼を操る渚くんっていったい…などと、考えてしまうのはついついそんなこと。鬼を操る財界の貴公子、もとい皇帝…いや、魔王、か。
この疑問は、うん…考えないでおこうかな。
そうして数分後、封筒の中身を改め終えた明智氏は顔をあげるなり不愛想にフンと鼻を鳴らすくらいにして…
「…まぁ、いいだろう。預かる」
って、おぉい!!なんか違うでしょ、それ。
でもまぁ、今は無事に渚くんにその書類が届けばいい。鬼の明智氏も仕事中の身。嚙みついて無駄な足止めをさせるわけにはいかない。困るのは渚くん、だからここは穏便に…
「では明智さん、お帰りもお気をつけて」
「フン、言われなくてもそうする」
ムムッ…