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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚






「ごめんなさ…」


渚くんが仕事そっちのけで、本気で心配してくれている。その悩まし気な、苦しげにも見て取れる表情に胸が締め付けられて咄嗟にそんな言葉が口をついた。

するとその言葉を遮るように彼の指先が唇の上を滑り、頬へと添えられる。


「…熱がある。いつからだ」


あぁ、少し冷たい彼の手の感触が上気した頬にはとても心地いい。


「こんなになるまでどうして黙ってた」

「………」

「千隼…」


…ウソ。渚くんは気づいてたよ。

彼は必死に隠そうとしていたアタシに合わせて何も言わなかっただけで、本当は初めから全部知ってた。

だから今日、彼が用意してくれたレストランの個室はソファー席だったし、出されたメニューも消化によかったり、カラダの温まるようなモノが多かった。いつもなら勧めてくるアルコールも今日に限ってはなかったし、食事だけじゃない。思い返せばあの時も、あの時も…。

そうやっていつものスマートさを表立てて、内側ではずっとアタシを気遣ってくれていた渚くん。

ねぇ、渚くんは…


「…いつから、気づいてた?」

「…!?」

「渚くんは…いつからアタシのこれに気付いてたの?」


ぼんやりとしながらも、しっかりと彼を見つめ返しながら思ったことを口にした。

すると彼は一瞬ハッとしたような表情を見せるものの、すぐにフッとどこか含みのある柔らかな笑みを見せ、長い指先の裏をアタシの赤い頬の上で滑らせる。




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