テキストサイズ

今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚









彼の伏せられた長い睫毛が揺れ、整った目元に影を落とす。

ぽつりぽつりと口から零れ落ちた低く落ち着いた声が、しっとりとした空気のなかに溶けていった。

訪れた静寂のなか、熱よりも彼によってあげられた体温をもて余したアタシの心臓は、張り裂けそうなくらい大きな音をたてている。

目頭が熱くて、鼻の奥がすっぱい…

無性に彼に触れたくなって、俯いた渚くんの目元を隠している少し長い前髪に手を伸ばした。するとそれまで互い違いだった視線が糸のように絡んで、漆黒の瞳がアタシだけを映しながら深い色で揺らいでいく。


「そんな顔…しないで…」


──アタシは渚くんといたかったから会いにいったんだよ…


いつも安心させてくれるその手に自分の手を重ねる。


「アタシも嬉しかった、から…」


そこに重ねるアタシの想い…


「渚くんが気遣ってくれてたの全部わかるから…」


だから…


「…ありが」とう…


精一杯の声にして伝えた想いの言葉尻は触れあった温もりの向こう側に消えていった。

そっと触れるように重ねられた唇の重みにアタシは静かに瞳を閉じる。慈しみを感じさせられる優しい…優しいキス。

言葉にしきれない彼の想いが伝わってくるような温もりを受け止めながら、アタシも溢れて仕方がない言葉にできない想いを温もりに乗せる。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ