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school life

第5章 歪む心~school life~

「で、なによ?」

「俺、自主退学するんだ。この姿見たら分かると思うけどちょっと色々あってな」

「あっそ。だから?」

 わざわざそんな報告を私にしてどうしたいのだろう。告白するならまだしも、そういうわけでもないみたいだし。

「俺さ、後悔したんだわ。今まで何やってたんだろーって。これじゃ、俺と母さん捨てた親父と変わんねぇわって。まあ、母さんにも捨てられちまったんだけどな。俺が荒れてんの見て、言った奴いるんだよ。冬真はただのマザコンでバカなのよ。アホだから寂しさの表現を間違った方法でしかできないの。でも、もういいよ。これからは私が冬真の罪を一緒に背負ってあげる。冬真の悲しみを癒して、包み込んであげるって」

「そう。よかったじゃない。愛されて」

「だから俺、新しく生まれ変わろうと思って。俺の罪は大きい。でも美紅の罪も大きい。そんなことしたって何も変わらない。虚しくなって、余計に自分が傷つくだけだぞ」

「ほっといてよ! あんたには関係ない」

「別にいいけどよ。じゃあさ……なんで泣いてんだ?」

 泣いてる……? 私は自分の頬に触れる。指先が濡れた。私が満たされない意味が今、気づいた。自分で行動せずに僻んで嫉妬しているだけだった。歯には歯を。目には目を。いじめにはいじめをだと思っていた。でも、それは違った。だから、京子は本物の笑顔なのに、私は見せかけの作られた笑顔になってしまったんだ。勇気を持ってせっかく謝ってくれたのに、向き合ってくれたのに、私はなんと失礼で酷いことをしてしまったのだろうか。

「ごめんっ。ごめんなさい」

 謝っても遅い。取り返しのつかないことをしてしまったのだから。私は北咲に抱きついて泣いた。見た目は変わったけど、煙草臭さだけは変わらない。

「おいおい……」

 北咲の苦笑が耳に届き、温もりを感じる。取り戻せはしない。けれど、十夜を好きな気持ちだけは伝えよう。北咲の腕の中という変な状況で誓った。

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