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犬猿の仲良し

第23章 ちくちく

蒼「その様子じゃ分かってるみたいですね?さっすがぁ!璃玖先輩♡…健太さんから手を引いて下さい」
神「ちょっと待った。おめーにそんな権限はねぇだろう」
蒼「神楽さんは璃玖さんが好きなのにどうしてそんなに怒ってるんですかぁ?いい機会を与えてるんですよ僕は。それに権限はあるんですよ?だってこれ」

蒼依は、写真をひらひらとなびかせる。
神楽は真顔でその写真を奪い取り、ビリッビリッと破り捨てた。

神「ほら、なくなったがどうするつもりだ?」

蒼依は口をあんぐりと開けていた。
俺は安堵していた。
…それが甘かった。

蒼「あはははははっ!!!」

神楽の額に青筋が浮かんだ。

神「何がおかしい?」
蒼「まさかそんな写真一枚で脅せると思いませんよ!データ、あるに決まってるでしょう?あははは、今の勝ち誇った顔!!!では、さようなら♪璃玖さん、よろしくお願いしますね?今のをバラされたくなかったら♡」
高笑いしながら去っていく蒼依。

神「てめぇいい加減に…」

神楽は拳を作った。
俺はその腕を掴んだ。
神楽は、納得行かないという顔で俺を見てきたが、俺は首を振った。

神「く、っそ!!!!!」

ゴッ

神楽は、蒼依の代わりに壁を殴った。

あんなの、見せられたって何かの間違いだと言えばそれで解決するのかもしれない。
でも信頼を失う。
それだけは絶対に駄目だ。

これはきっと罰なんだ。
元々は俺が悪い。
長く待たせた。
健太が俺のことを待ってくれると言った。
その言葉に甘えていた。
そんな俺が悪かったんだ。

神楽…。
そんな顔しないでくれ。
俺は平気だ。

でも、健太から手を引くってことはもう…。
やっと自分の気持ちに気付いたのに。
何もせずに終わってしまった。
残ったのはあの写真のデータだけ。

ごめん健太。
待たせた挙げ句、こんな答えになってしまった。
あぁ。
もしかしたら、蒼依との方がお前はいいのかもしれないな。

神「璃玖」

何だ?

神「声、どうした?」

え?
声?

そういえばいつからか俺の声は聞こえない。
神楽の声が聞こえている辺り、耳がおかしいわけじゃない。

声が出ない…?

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