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犬猿の仲良し

第24章 届いて

恥ずかしさで死にそうだったが、伝わったという安堵で俺は力が抜けていた。
これで声が出れば言うことはないんだけど…ってそうだ。

俺は健太を押し退け、紙に「蒼依に俺と神楽がキスしているように見える写真を撮られた。それ見せられても信じないでくれ。俺達はやってない」と書いた。

健「信じるのは当たり前だけど…何で蒼依?」

「あいつ、お前のことが好きらしい。脅しのネタとしてだ」

健「なるほどな。ん、分かった」

案外あっさりしている健太に驚いた。
どうでもいいのか?

健「もうなんかそんな事よりさ、嬉しくてハゲそう」

そんな事って俺がどれだけ苦しんだと思ってんだ…?!
ハゲろこんな奴。
ハゲてしまえ。

でもこんな話をしても傷ついていない健太を見て、気が楽になった。
これからも近くに居ていいんだ。

健「な、俺ら両思いじゃん?」

健太の悪い顔。
こんな時、良い予感はしない。

…セックスしようとか言われたらどうしよう。
承諾するのは無理だ。
急すぎる。
だけど断りづらくなっているこの状況。

健「キス…してくんね?」

キス?
は?
それだけ?

…いやいやそれだけって事ではないよな。

してって事は俺からって意味だろう。
俺からしたら恥ずかしい行為だ。
でも俺の妄想のおかげでハードルが下がった。

キスか…。
前にしたもんな。
あんな感じでいいんだよな?

何故こんなに俺が乗り気なのかというと、健太が嬉しいのと同じくらい俺も嬉しいからだ。
両思い。
この響きも凄く嬉しかった。
…これで俺もホモの仲間入りか。

今まで軽蔑しててごめんなさい。
健太以外はこれからも無理だろうけど。

健「やっぱだめだよな!悪い、調子乗ったわ。大事にするから…」

俺は健太の腕を軽く摘まんだ。

健「璃玖…それは期待するって」

俺は健太の目を見て頷いた。

健「幸せすぎて吐きそう」

何でこいつは汚い例えしか出来ないんだ。
ハゲて吐くとか中年のサラリーマンか!!!

健太はニヤニヤしながら俺の目の前に座った。
…ガン見かよ。
俺は目を閉じろというジェスチャーをした。

健「もったいねぇ。まぁいっか、はい」

キス…。
口をくっつければいいだけ。
緊張するな俺。
心を落ち着けてから、俺は顔をゆっくり健太に近づけた。

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