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犬猿の仲良し

第19章 「彼」の存在

俺が動きを止めると、黒くてでかい影がこっちに向かって走ってきた。
…?!

ガバッ

健「璃玖…!」
璃「は…」

突然強い力で抱き締められた。
俺はあえて、抵抗はしなかった。

健「璃玖…わり…俺何にも出来なかった」

弱々しい声で訴える健太。

璃「…俺の方だよそれは」
健「違う!俺、何か返してやれれば仲直りも出来るかなって思ったんだけど…ここに居るって事は…」

健太は顔をしかめ、苦しそうな表情をしている。
そんな顔すんなよ。
こっちまで苦しくなる。

璃「家に居たよ」
健「は…?じゃあ何で?」
璃「今は…お前に会いに来た」
健「そんな事分かった!じゃなくて何で来た?!」
璃「うるせぇ!俺の勝手だろ!」
健「だめだよ!戻れ!馬鹿じゃねぇの?!」
璃「馬鹿だぁ?!馬鹿はてめーだろ!!!学校休んでまで俺の親説得したんだろ?!わざわざ仕事場まで行ったんだろ?それに何も出来ないって…じゃあ俺は何だよ?!お前から貰うばかりで何もしてやれねぇ!」
健「璃玖…?」
璃「かっこつけてんじゃねーぞ…」

俺は健太の胸に顔を埋めた。
健太はそんな俺の頭をそっと撫でた。

健「ごめんな」
璃「俺も…ごめん」

その言葉を発した途端、心が軽くなった。
何でこんな簡単な一言がすぐ言えなかったんだろう。

そして俺達はその時間に少し浸った。
今までの穴を埋めるように。

ー…

俺達はベンチに座って、近況を報告し合った。

璃「でさ、友達出来たんだよ」
健「へー、璃玖に友達が出来るとは」
璃「むかつくなお前。まぁ自分でもびっくりしたんだけどさ…すげぇいい奴だった」
健「誰なん?クラスの奴?」
璃「花火と神楽」
健「名前が豪華なコンビか!」
璃「で、そいつらが背中を押して…いや、ぶっ叩いてくれたから俺今ここにいる」

健太は黙り、何かを決めたように話を切り出した。

健「あー、俺も…」
璃「ん?」
健「やっぱり応えてくれねぇ?」
璃「は?何を?」
健「返事、欲しい」
璃「…お前今回の原因分かってんの?」
健「分かってるし考えた上で聞いてる」

この目は冗談で言ってる目じゃねぇな。
本気だから逆に困るんだよ。

…逃げるのはやめたんだ。

璃「俺は…」

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