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リモーネ

第3章 卯の花とフユベゴニア

「校庭にいない時点でサボりだよ」

と指を指されながらかえで先輩にばかにしたように笑われる。

ルールの裏をかいて屋外なら校内のどこでも良いと解釈して良い気になっていた俺は、どう否定しようもないかえで先輩の返答に言葉を失った。

「ははっ…ほんっとセナちゃんってかわいいよ。
…まぁいいや、座ったら?」

一通り笑ったかえで先輩は改めて俺をかわいいとバカにしてから自分の隣を手のひらで叩きながら俺に座るよう促した。


かえで先輩の隣に少し距離を空けて座ると、もっとこっち。なんて言いながら俺の腕をひっぱって自分の真横に座らせようとする。

俺は、暑い、暑苦しいと思いつつ、人の話なんて聞かないかえで先輩への抵抗は無駄だと思って大人しく真隣に座った。


俺が座り直してから一言もしゃべらないかえで先輩を、珍しく静かだな。と感心しつつ、目の前のアリの行列を眺めていた。

アリの行列を遡って死んだバッタにまとわりついているアリの集団を見つけた頃にかえで先輩が話しかけてきた。

「セナちゃん。」

初めて会ったときのような真面目な声で話すかえで先輩に不覚にもときめきそうになった。

「…どうしたんですか?」

「俺、セナちゃんのこと、好き。」

俺の返答から少し間をおいて発せられた言葉は信じがたい、衝撃的なものだった。

「…!?
はいぃ!?」

俺は驚きのあまりそれに任せたすっとんきょうな返事をしてしまった。


大きなハナミズキの木漏れ日のなかで、正面の花咲く日を待つひまわりを見ていたかえで先輩がどこか苦しそうな顔をしながらこちらを向いた


「だからさ。俺と付き合ってよ。」

そして少し首を傾げながら微笑んで交際の申し込みをする。

「え、えっと…その…。」

その一連の表情がどのような感情を意味しているのかがわからない俺は、ただ取り乱すしかなかった

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