
リモーネ
第5章 ペチュニア
「俺、あんまり賢くないんで伝え方を間違えたんだと思うんですけど…。
俺、最初にかえでに会ったとき、というか、かえでが俺に話しかけてきたとき、変な人だなって思ったんです。
でも、面をつけてないときに色々話して、なんて優しい人なんだろうって考え直したんです。
で、そのあとにうちの高校に来いって言われて、それが忘れられなくて、ひたすら勉強頑張ったんです。
なんでがんばれたかなんてよくわからないんですけど、たぶん、最初からかえでに惹かれてたんだと思うんです。
かえでが俺の性格をどう理解してくれてるかなんてわからないですけど、俺としては、すごいことなんです。
俺、好きなことしかがんばれないんです。俗にいう怠け者なのかもしれないですけど、これは俺の個性なんだと思うんです。
で、俺は勉強が好きじゃなくて、こつこつできません、でも、がんばってかえでと同じ高校にはいれたんです。
かえでに惹かれてたから嫌いな勉強がんばれて、同じ高校に行って、同じ部活して、恋人になったんです。
俺、今、人生で一番幸せです。」
セナは話しながら少しずつかえでに近づき、破顔したところで思い切って抱きしめた
「…わかって、くれましたか?」
セナは大人しく自分の腕に納まる(―でかいからおさまりきっていない…)かえでの方に顔を傾けて静かに、恐る恐る問いかける。
かえではセナの右肩に額を埋めて、こすりつけるように1、2度首を縦に振る。
「…誤解させるような言い方をしてすみませんでした。上、戻りましょう。」
