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リモーネ

第5章 ペチュニア



セナは頭上から降ってきた思わぬ言葉と低い声に思わず声のもとを見上げた。

「…え?」

「俺の手がセナちゃんのお母さんの手に似てるってだけで俺といるの?もしかして顔とかも似てたりする?」

見上げた先にはいつものようなはじけんばかりの笑顔はなく、目の奥底が冷えきっていた

―俺はまた、やってしまったのか。
 何がいけなかったのか。
 俺は思ったことをいっただけなのに
 何を間違ったのか
 わからない

「っかえで!」

重ねていた手が力ずくで一方的に引き離され、かえでは立ち上がるとドアノブを掴み扉を開く

「まって!」

セナも慌てて立ち上がりその背を追う

「違う!違う!聞いて、かえで!お願い!聞いて!」

「なにも話すことなんてない!!」

「―話さなくていい、聞くだけでいいから。
少しだけ時間をください。」

かえでは階段をおりきったところで叫んで取り乱すセナを振り返り、冷たい視線を投げ掛ける


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