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リモーネ

第3章 卯の花とフユベゴニア

田部ちゃんはいつもハキハキとしてて、明るい。

でも今は、今までに見たことがないほどテンションが低い。


「私…。」

と言うと、俺の正面に回りながら俺の肩に両手を乗せる。

…なんか、言い雰囲気だな。

ん?

これはもしかして、告白?

俺、本日2回目の告白されちゃうの!?

いや、まさかそんなことは…


あれ、もしかして田部ちゃんの顔近づいてきてない!?

これ、もしや…!

キ…

「鬼なの!
だからりん君今から鬼ね!!」

田部ちゃんはぱっと笑顔になって早口でそう言いきると、脱兎のごとき勢いで去っていった。

俺は自分の浮き足立っている感情と突然鬼を押しつけられた驚きでしばらく固まっていた。

「…おに…。


鬼!?」

そうだ、俺は今絶賛鬼ごっこ中だったんだ。

鬼で鬼ごっこが終わるのはなんだか、嫌だ!

特にこの鬼ごっこには何かある気がする…!

俺がアリと死んだバッタを眺めていた時間はどれくらいだった…?

…とにかく誰かに鬼を渡さないと!!

俺はとりあえず中庭を飛びだして運動場に入ったところで、無情にも部活終了のチャイムが鳴った。

俺は肩を落としながらとぼとぼと剣道場へ帰ると、俺以外の部員がにやにやとしながら俺を待っていた。

「んやぁやぁやぁ、セナちゃん」

さっき俺に告白してきた人物とは思えないような話し方で近づいてきたのはかえで先輩。

「セナちゃん、今鬼でしょ」

かえで先輩をスルーしたそのあとに話しかけてきたのはいつも通りの神崎先輩。

「…はい…。」

「うん。
じゃあセナちゃん、今日から1週間、鍵当番ね。」

「…そんな制度ありましたっけ。」

「ん?今日作った。

その方が燃えるでしょ。」

寝耳に水な神崎先輩の突然な新制度発言と勝負に燃えるどうこうを求める人だったことにも驚きで、俺は、はいとしか答えられなかった。

そもそもこの部活の鍵当番は、学年に関係なく一日交代制だ。

そして、この部活には13人の部員がいるため、当番は13回の練習に1回となる。


だから1週間の鍵当番は、かなりの罰だ。



最後に鬼だった罰を言い渡された後、着替えると俺以外の部員はそれぞれの家へと向かい、俺は鍵を返した後、一人で帰った。

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