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琉依短編集

第4章 偶然の奇跡

「あーそれそろ帰ろうかな」

 俺は呟いた。いつもの駅で待っている。現在の時刻、夜十時。人もまばらになっている。電車が来て、俺は乗る。

「すみません、隣いいですか?」

 俺は声をかけられたほうを見る。俺の目には青で襟足だけ赤の髪。耳ピアス二つ。赤色のカラコンをつけた目。パンク服姿の若い女性がうつった。

「どうぞ」

 俺がそう言うと女性は隣に座った。

「ありがと。レコーディング長引いて、遅くなったんだ」

 俺はもう一度、女性を見る。どこかで見たことある顔だ。女性の隣には黒のギターケースがある。

「音楽やってんのか?」

「あぁ」

 女性は片方にイヤホンをつけ俺と会話をしている。

「何、聞いてんだ?」

「Dark MoonのDark World。アマチュアバンドの新曲」

 聞いたことない。マイナー好きか?

「Dark Moonのメンバーか?」

「昔。今は別のバンドにいる」

 一瞬、声が震えた気がした。気のせいだろううか。

「へぇ、なんのバンドだ?」

 聞いても分かんないだろうなぁ。とか言いつつ聞いている。

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