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琉依短編集

第1章 花火~蓮と夏の思い出~

 4年前──

「な~琉依(ルイ)、花火大会行かねー?」

 蓮(レン)の突然の誘いにあたしは頬を赤らめた。

「いいよ」

「よし! じゃ、7時50分に土手で待ってる」

 蓮はそう言うとギターを担ぎ鼻歌なんか歌って、スタジオを出て行った。

 あたしもすぐ家に帰る。

「なあ、浴衣着せろ」

 あたしは母に言う。

「また口の悪い。まあ、いいわよ」

 母は紺色で白の百合の花が入ってる浴衣を着せてくれた。

 染めて痛んだボロボロな髪をアップにしてくれた。

「サンキューな」

 あたしは普段しない自分の浴衣姿に照れながら、そっぽを向き言う。

 下駄を履き約束の土手に向かった。

「お~琉…」

 蓮は途中まで言うと俯いた。

「どうした?」

 不思議に思って聞く。

「かわ……いい」


 聞こえるか聞こえないかの声。でもあたしには、はっきり聞こえた。

「ありがとう」

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