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今日も明日も

第12章 いたみ

唇に伝わるにのの鼓動。

これも全て、自分のものにしたい。

「…いいよ?」

ふいに、にのが囁いた。

「俺を殺して…相葉さんのものになるなら」

「にの…」

「だけど、俺は生きて相葉さんを感じてたい」

撫でていたにのの手が

グッと俺の髪を掴む。

「俺を殺すなら、俺は相葉さんを殺す」

その手を後ろに引っ張るから

俺は首を仰け反らせる格好になる。

「…っ!」

いつの間にか、にのの左手には

胸元を傷つけたペーパーナイフが握られている。

…にのはそれを

迷いなく俺の喉に当てた。

「俺だって同じだよ?…相葉さんの全てが欲しい」

「…俺はとっくににののものだけど」

仰け反ったまま、にのを見つめて笑って見せる。

「だったらさ」

…俺の痛みを知って?

にのはそう言うと

喉に当てたナイフを下に引いた。


今度は、俺の体に赤が滲み出す。

「…同じ?」

思わずクスクスと笑う。

「うん。同じ」

にのはナイフを放り投げ、俺の傷を舐めあげた。



きっと、この時にはもう

…二人とも壊れてたんだ。




二人きりの真っ白な世界は

永遠に赤い糸で結ばれる。


もう、離さない。

愛してるよ。


End


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