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今日も明日も

第4章 すれちがい

初めて相葉さんを怖いと思った。

出来るなら、すぐにでもここから逃げたい。

だけど、それは出来そうにはなかった。


「にのこそ、何なの?」
「…っ」

手首を掴む指に更に力が籠る。
痛みに顔を歪めながらも、睨むのはやめない。

「何翔ちゃんに絡まれて喜んでるの」
「喜んでなんか…」

あんなのはただのお遊びじゃないか。
翔さんと大野さんの事は、相葉さんだって分かってるはず。

「翔ちゃんカッコいいもんね」
相葉さんが、皮肉めいた笑みを浮かべる。
「大人だし、優しいし…」

段々と笑みが苦し気なものに変わってきた。

何勝手な事言ってんだよ。
元はと言えば、原因は相葉さんじゃないか。
嘘なんかつかなければ…
俺と会わないようにしなければ

…良かっただけじゃないの?

「ふざけんなよ。最初に離れたのあんただろ」
「え…」

「分かりやすい嘘ついて、俺を避けてただろうが」

ふと、手首への力が緩む。
それを見逃さずに、俺は思いきり振りほど…

く事はできなかった。

先に、相葉さんが俺の動きに気づいたから。

チッと思わず舌打ちする。

何も言わずに俺を見つめる相葉さん。
その目の中の怒りはまだ残っている。

「ああそうだね。翔さんなら優しいよね」
「…にの?」

「大人だし、俺の事も大事にしてくれるだろうね」

泣きそうになる気持ちを抑えて、吐き捨てるように言ってやる。
離れるなら、こっちから離れてやるよ。

みじめな思いなんかしたくない。

「ダメだよ…」

相葉さんが少し俯く。

「俺から離れるなんか許さない」

恐ろしく低い声。
再び俺を捉えた目は

俺を見ているようでいて…何も映していなかった。

「絶対に…許さない」
「あ…っ!」

相葉さんが噛み付くように首筋に顔を埋めた。
その隙に、俺の手は一つに纏められて頭の上で押さえ付けられる。





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