今日も明日も
第35章 こころ、ふわり
多分、いや絶対に誰も知らない
…俺がこんな事思ってるなんて
気持ちを伝えられないチキンな奴だなんて
「あ、何飲んでんの?」
鏡の前、髪の毛をチェックしていたら
…ひょいと取り上げられた紙コップ
「…コーヒーに決まってるでしょ」
「何でもいいや、ちょうだい」
ちょっと!と止める間もなく、俺のコーヒーは隣に座った奴の喉に流されてしまった
「なぁんだよー…」
「んふふ、ご馳走さま」
思わず唇を尖らせた俺のそれを、ムニッと摘まんで
「後で買ってあげるから」
子どもみたいに頭をポンポンして…
「あれ、にの顔赤いよ?」
俺をおちょくった張本人が、今度は心配そうに顔を覗き込んだ
「何でもないから…あっちいって!」
追い払うように手の甲を向けて払う仕草をすると
"はいはいごめんなさいねぇ" なんて全く悪びれない声で謝って、奥に歩いていった
鏡を見る
さっき、指が触れた唇に思わず自分の指を添える
…嬉しくて、蕩けそうだよ