今日も明日も
第44章 恋空模様
…あ、今日も聞こえる
耳を澄ますと、放課後のざわついた廊下の先から微かに届くピアノの音
曲名なんか分からないし、とりあえず “ピアノだ“ って程度の認識
元々興味なんかなかった
強いて言うならロックバンドとか、所謂ノリノリな曲の方が好きだったし
そもそも俺、楽器なんか弾けないし
だけどいつからか、放課後に聞こえるそれを気にするようになっていて
毎回同じ曲を弾いてるからか、いつの間にか頭にメロディーがインプットされていて
「~♪~♪♪~♪」
「何、その鼻唄」
気が付いたらそれをフンフン声に出してたらしくて
友達の潤に突っ込まれるまで分かってなかった
「え、知らない」
「は?」
「なんかさ、毎日のように聞いてたら覚えちゃって」
“頭から離れないんだよねー“
話すのと同時に途切れた曲
その時、視線を感じた気がしたけど
俺は気に止める事もなく、いつものように潤とくだらない話で盛り上がっていた
視界の端で、誰かが教室を出て行くのを捉えるけど
だけどそれも学校では日常茶飯事の風景
気に止める要素なんて1つもなかったんだ