今日も明日も
第44章 恋空模様
その日、俺は帰る直前に担任に捕まった
一緒にいた潤は、バイトがあるからと頼みを断ってさっさと帰ってしまって
予定も何もなかったから
何気に怒ると果てしなく怖い、担任の用事を断る勇気は俺にはなくて
言われるままに、ずっしりとしたプリントの山を運ばされる羽目になった
「センセ、まだあんのー?」
「うっせ、いいから黙って手伝え」
一体何に使うんだって思う大量のプリントの束
3回目を運びながら “腕疲れたー“ なんて文句を言おうとした一瞬の「間」
そこに、あの曲がまた聞こえてきた
「ねぇ、センセ?」
少し前を歩く担任を呼び止める
「あん?何だよ…」
「聞こえる?」
俺の言葉に、歩を止めた担任も耳を澄ませた
「ああ、いつも弾いてるな、…あいつ」
柔らかい表情で音のする方を見つめている
「なんだ、知ってたんだ」
「そりゃ、音楽室の鍵番俺だからな」
“俺が許可したんだから、当たり前“
そもそも学校なんだから
俺だけが知ってるなんて、思う方がおかしいのに
何故かちょっとつまらなく感じてしまっていた
秘密がバレたような、そんな気分になった