
今日も明日も
第44章 恋空模様
そう言えば、最初に “行けば?“ って言ってくれたのは先生だったっけ
「…あれから、行ってないんだろ?」
…何でそんな事、先生が気にすんだよ
だけど先生の顔はどこか真剣で
じっと俺を見つめている
怒ってる、とは違うけど
いつもみたいにおちゃらけてはいけない事は感じ取った
「行ってないよ。…だって挨拶1つで怯えてんの見たら、行けないよ」
「音楽室では?」
「え?」
「あそこでは、二宮どうだった?」
先生の言葉に、あの日の出来事を思い出す
二宮くんは…やっぱり怯えてた
だけど俺の頼みを聞いてくれて、ピアノを弾き始めたら
…まるで別人みたいだった
あんな顔、教室では1度も見た事ない
「どっちが…本当の二宮なんだろうな」
「え?」
先生が、少し目を細めた
その目は、俺ではなく遠くを見ている
「…相葉なら、いけると思ったんだけど」
「え、…何が?」
「あのピアノを耳に止めたの、お前だけなんだよ
…先生達ですら、気にもしないのに」
あんなに綺麗な音なのに
あんなに、優しい気持ちになれるのに
…誰も気にもしてなかったの?
