
今日も明日も
第44章 恋空模様
先生が俺の肩に手を置いた
「なぁ、もう一度行ってみない?」
「はぁ?」
何言ってんの
また二宮くん怖がらせるのかよ
「中に入らなくてもいいからさ、行ってこいって
…好きなんだろ?あの曲」
何やってんだろうな、俺
そりゃ、また近くで聞きたいし
あの二宮くんの顔を見たいとは思ったけど
だけど音楽室の前に来たはいいけど、音がしない
あれ?もしかして帰っちゃった?
…何となく教室のドアの小さな隙間から目を凝らして中を見ると
二宮くんはピアノを愛おしそうに撫でていて
…何やら話しているのが耳に届いてきて
でもそれは独り言みたいで
かなり集中しても良くは聞こえない
途切れ途切れに何とか聞こえる声と、何故かはっきり届いた最後の言葉に
俺は驚くしかなかった
“…また来てくれるかな?……相葉くん“
俺を、待ってくれてたの?
邪魔されて嫌だったんじゃないの?
ピアノに話し掛ける二宮くんの横顔は
何だか凄く悲しそうで
俺は一度キュッと唇を噛み締めてから
……静かに音楽室のドアを開けた
