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今日も明日も

第54章 Perfect Life


少しだけほろ酔いで歩いて、駅に戻る途中
俺はかずに何も言わずにタクシーを止めた

「相葉さん?」
かずが当然訝しげな顔をしたけど

「デートの続き、…乗って」
にっこり笑って、有無を言わさずに先に促す

運転手さんの手前、ぐずぐずしてもいられないから
“なんなの!“ って言いながらも奥に乗り込んだ

続いて俺も乗ると、メモに書いた住所と名称を “ここにお願いします“ と伝える

行き先を口で言わないのは、聞かれると内緒にならないから


久しぶりの「待ち合わせデート」は最後までしっかりエスコートしたい

それでなくてもいきなり花見でやらかしたんだから、それを挽回したいのもある

今日、何でかずをデートに誘ったのかを明かしたいんだ

俺にとっては忘れられない、とても大切な日

多分かずは覚えてない



どこに連れてかれるんだろうとしきりに外を見るかずの手に、運転手から分からないようにそっと重ねた

ちら、とこちらを見たかずは

…その手を離さなかった

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