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今日も明日も

第57章 見えない鎖 part Ⅰ



待てよ?
彼を連れて帰るのは構わないけど

考えてみたら家には何もない

…とりあえずは風邪薬か解熱剤、後は傷の手当てグッズを買えば間に合うかな?

念の為に冷えピタと湿布も買っとくか

傷があると言う事は捻挫とか打ち身もあるかもしれない

そこまで考えてから

…そう言えば、誰かの為に何かをするなんて
初めてかもしれないな

信号で止まる度に、隣で苦しそうにしている名前も知らない彼を
俺は何とも不思議な気分で見つめていた


********

アパートに着いて、まずは彼をベッドに寝かせた

明るい所で改めて彼を見て、思わず息を飲む

薄いシャツから覗く腕の傷は無数にあった

まさかと思って、そっとそれを捲ってみたら
…やはりと言うか上半身も痣や傷がある


「……んぅっ」

また、彼が呻き声を上げた

今度は瞼がギュッと動いて、首も少しだけど横に振られている

もしかして気が付いた?

驚かさないように、額に当てた濡れタオルを交換して
俺は少し離れた所から彼の様子を見つめる事にした

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