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今日も明日も

第57章 見えない鎖 part Ⅰ


起きても起きなくても
まずは彼をここから運ぶのが先だ

膝の下と脇の下に手を回し、そっと抱き上げて
…その軽さに驚いた

そして抱いてみて気付いたけど、細い

軽いから当然なんだろうけど、それでも細すぎると思う
力を込めたら簡単に折れてしまいそうじゃないか


ああ、今はそんなこと考えてる場合じゃない

早く彼を何とかしなきゃ

それにこの気味悪い山からも早く降りたいし


抱き上げても歩いても、時々呻くような声を出すだけで目を開けない彼を助手席に座らせてから、ゆっくりとシートを倒す

そして自分の着ていたジャケットを彼に掛けてから
急いで運転席に乗り込んで車を発車させた


この後どうしよう

病院に行った方がいい?

だけど変に疑われても嫌だなぁ

山道で助けました、なんて言って簡単に信じて貰えるとは思えないし
だからと言って嘘を突き通せる自信もない

そうなると家に連れていくしか選択肢はないわけで

「ま、いっか」

どうせ俺は一人だし

たまには人助けってのも悪くない

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