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第58章 見えない鎖 part Ⅱ


かずくんを見ると、離さなきゃいけないのは分かっているみたいだ

だけど離せない、そんな感じ

困ったな
強引に離す事は出来ないし…


そこで俺も何を思ったのか
脱ぎ捨てたままのトレーナーが目に入ると、手を伸ばしてそれを掴み


「これを俺の代わりに持ってて」
何故かかずくんの胸に軽く押し付けていた

そんなんで上手くいくなんて思わない
ただの思いつきだった


だけどかずくんはすんなりと手を離し、そのトレーナーを両手で抱き締め始めた

「まーくんの、匂い」
どこか安心したように目を閉じるかずくん


手が離れたら離れたで、今度は俺の方が寂しく感じるとか
…馬鹿か、と自嘲しながらも、今のうちにと急いでキッチンに向かった


やっぱり最初に感じた通り、かずくんはどこか幼い

表情も、言葉も、21歳のそれには到底見えない

あれか、所謂…障害者ってやつ?

…だけど何だかそう決めつけるのも憚られる

だって俺はかずくんをそこまで深く知らないし、そもそもその定義も良く分かってない

「…ま、いっか」

今はかずくんが元気になること
それだけ考えればいい

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