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今日も明日も

第64章 見えない鎖 part Ⅴ


初めて炊いてくれたご飯は、正直上手く炊けたとは言えなかった

だけどそんなのはどうでもいい

ご飯がべちゃべちゃだろうと芯があろうと、かずくんが炊いたと言うだけで美味しく感じるんだ


かずくんはまた泣きそうになって謝ろうとしたけど

“ごめんなさい“ を口にする前に、自分の唇に人差し指を当てて

「謝っちゃダメ」

かずくんの言おうとした言葉を遮った


「でも……」

だからと言ってかずくんが簡単に引き下がる訳でもない


「明日、俺と一緒に炊いてみよっか」
“教えるから“

かずくんの好意を無駄にしたくなくて導き出したのはこの言葉で

これしか浮かばないのもどうかと思わなくもないけど

かずくんが頷いてくれたから、これはあながち間違いでもないのかも

分かりやすく、簡単に

かずくんには、それが一番伝わるから





「ごちそうさまでした」

パチンと手を合わせる俺に、かずくんも真似をして手を合わせる

「…ごちそうさまでした」

少なく盛ったご飯と野菜炒めは、きちんと完食出来ていた

「全部食べれたね」

まだまだ少ないと言える量だけど

最初の頃よりは確実に食べられる量は増えている

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