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今日も明日も

第64章 見えない鎖 part Ⅴ



俺にとっては些細な事も、かずくんにとっては大変な事らしい

お風呂から出たかずくんは、俺が出た時には既に
フローリングの上で丸くなって眠っていて

いつもは俺が出るのを待って、一緒に寝室に行っているのを考えると

きっと “ご飯を炊く“ と言う作業が大きな出来事だったと簡単に想像ができた

俺からの電話を受けて、何か手伝おうと一生懸命に探して

いつも最初にやる米のセットを見てたかずくんが、見よう見まねで精一杯頑張ってくれた

排水口に貯まった米を見て、米を洗うのに苦戦したのもすぐに分かった

必死に作業するかずくんを思い浮かべるだけで鼻の奥が痛くなる


こんなに素直で、一生懸命なかずくんを
どうしたら痛めつける事が出来るんだろう

俺には、かずくんの “兄“ の気持ちなんか分かる訳もない

だけどいずれは、彼と会わなければいけない時が来る

多分、彼は
かずくんを探している

あの場所から消えたかずくんを、そのまま見過ごすとは思えない

だからこそ、今はかずくんに安心を与えてあげたい

監視をしてでも、かずくんの不安要素を失くしていきたい


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