今日も明日も
第65章 見えない鎖 part Ⅵ
通勤の電車の中、昼休み、帰りの電車の中
この時間は毎日かずくんの様子を伺うのが日課になっていた
慣れてしまえば罪悪感なんてものは薄れてしまって、むしろ楽しみすら覚えている
かずくん自身は、毎日特に大きな変化もなく
相変わらず窓の外を見つめている生活を送っていて
時間潰しにと買ってみたクロスワードは興味がないのか全く手を付けようとしなかった
何かやりたい事はないかと聞いても特にない、と言われるし
だけど何もしない毎日なんて、いつか疲れてしまう
何か興味を持ちそうなものはないだろうか
…そんな事を色々模索していた時、会社の先輩から声を掛けられた
「仔ネコ、ですか」
「うん。5匹生まれてさ、後2匹の貰い手がいないんだよ。知り合いとかで欲しい人、いない?」
内緒で引き取ったら、かずくんは喜ぶかな?
ネコなら散歩もいらないから、家の中で遊べるし
何となく動物好きそうだし
多分前以て言うと、遠慮する気がする
それにもしもかずくんが無理そうなら、実家で引き取ってくれるのは間違いない
そこまで考えて
「俺、1匹貰いたいです」
俺は先輩に、そう答えていた