今日も明日も
第65章 見えない鎖 part Ⅵ
鼻を擽るかずくんの柔らかい髪
細いけどしなやかな体
「かずくん、いい匂いがする」
そしてほんのりと甘い香り
抱き締める事を受け入れている時のかずくんは、赤くなったままじっとしている
「そんな事…ないです」
未だに自分を汚いと思っているのは変わらなくて
照れていると言うよりもどこか辛そうにそう答えた
「かずくんは、いい匂い」
だから何回でも伝えるんだ
かずくんは汚くなんかないって
汚れてなんかいないんだって
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翌朝、いつも通りかずくんに見送られた俺は
電車の中でいつものように部屋のカメラを起動させた
多分今日からは、玄関に座る事もなくネコと遊ぶだろう
寂しいような、だけど安心したような
…そんな気持ちになりながら画面を見て
ー…嘘だろ?
相変わらず玄関に座るかずくんが映り、思わず目を見張った
腕にはしっかりと仔ネコを抱っこしている
それなのにやっぱりかずくんの顔はいつもと同じ、切なげな顔で玄関を見つめていた