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今日も明日も

第65章 見えない鎖 part Ⅵ


だけど、やっぱり少しは気が紛れてはいるようだ

時々仔ネコを撫でては何か呟いているし

俺ですら見てない優しい顔で仔ネコを撫でている


そんなかずくんの姿が嬉しい反面

やっぱりどこかで心が曇る


かずくんを喜ばせたくて引き取ったのに

かずくんの感心が俺から逸れる事が面白くない

ー…やっぱり俺、おかしい

どうしたら、この感情はなくなるんだろう




*******


「あ、相葉!待ってたんだよ!」

俺を見るなり、先輩が手招きしてきた

「話があるんだ」

昨日のネコの話だろうか

その割には人目から離れようとしてるのが気になる

朝の、人がいない自販機前のベンチまで誘導され

先輩の様子が何処かおかしい事に気が付いた

「どうしたんですか?」

「昨日の彼の事」

「え?」

そう言えば、先輩はかずくんを “見た事がある気がする“ と言っていた

「俺さ、気になって昔のアルバムとか見てみたんだよ」

「え…?」

「あの子、兄貴いない?」


まさかこんな所で繋がりがあるなんて思っても見なかった

いや、だけど何かの間違いって事もある

「何で、ですか…」

だけど俺の背中には、嫌な汗がじわりと滲み出していた



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