今日も明日も
第68章 見えない鎖 Ⅶ
先輩の後に付いて、どこに行くのかと不思議に思っていたら
“誰に聞かれるか分からないから“ と先輩の自宅にそのまま連れて行かれた
今の時間は奥さんも仕事で
家には誰もいないからちょうど良かった、と先輩が笑ったけど
そこまでしなければいけないのか、と言う不安が益々大きくなるのを抑えきれなくなる
だってそうじゃないか
ただかずくんのお兄さんの話をするだけなのに、外では話せないってなれば
どうしたって戸惑いは隠せない
「とりあえずコーヒーでいいか」
綺麗に片付けられたリビングに通され、俺は促されるままにカーペットの上に腰を降ろした
大きめのローテーブルには、可愛らしい花が飾ってある
「なんか…、新婚さんって感じですね」
「一応まだ新婚だから」
俺の呟きに、後ろからコーヒーを持った先輩が笑いながら答えた
「去年、でしたっけ」
俺も、披露宴には呼ばれていた
ただやっぱり、いつだったかまでははっきりとは覚えてない
「そうだよ。11月」
「…まだそんなんでした?」
「はは。付き合いだけは長かったからな」
先輩と奥さんの話は、入社当時から聞いてたからかもしれないな
…新婚の雰囲気を感じなかった、とは言わないでおいた