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今日も明日も

第68章 見えない鎖 Ⅶ



「まあ、そんな事はいいよ。あまり時間もないからとにかく話そう」

テーブルを挟んで座った先輩が、真剣な表情に変わる

「はい」

思わず正座をした俺に、先輩は

「楽にしろって」
苦笑して、手をヒラヒラさせた





********


かずくんのお兄さんと先輩は、小学校からの同級生だった

高校も偶然同じで、特に仲が良い訳ではないけど
そこそこ付き合いもあったらしい

彼の両親…つまりかずくんの両親は、かずくんが中学に上がる直前に亡くなっていて

事故死、とされてはいるけど

葬儀の時の兄の様子は、誰が見てもどこか奇妙だったようだ

まるでそれを楽しんでるようにしか、見えなかったらしい




「小学生ん時はさ、凄く弟を可愛がってた」

泣き虫な弟…かずくんを、いつも守ってたようだ

だけどいつからか

端から見ても異常な程にかずくんに対し、執着を見せるようになったと言う


いつだったか、彼が笑って言ってたのを聞いた

“かずなりは、俺の所有物だから“
…だから何しても、逆らわないんだよ


その時の声色が、表情が

今でも忘れられないくらいに不気味だったと、先輩が思い出したように眉を潜めた



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