今日も明日も
第68章 見えない鎖 Ⅶ
玄関の鍵を開けると、かずくんがいつものように泣きそうな顔で玄関の前に座っていた
「おかえり、なさい」
帰るコールをしてから、必ずここで俺を待ってくれている
ただ、今日からはその腕にはしっかりと子猫が抱かれていて
ほんの少しだけど、泣きそうな顔が和らいでいるように見えた
「ただいま」
ニコッと笑って、かずくんの髪に触れる
帰宅時のこの行為にはすっかり慣れたようだ
ふと見ると
かずくんの視線が、俺ではなく大量の袋に注がれている
「いっぱい買い物しちゃった」
「すごいいっぱい…」
「運ぶの、手伝ってね」
とりあえず玄関の中に袋をどんどん放り込んで
…何となく回りを伺ってから鍵を締めた
安アパートとは言え、鍵だけは最新のこれが
まさかこんな事で多少なりとも安心材料になるとは思っても見なかったけど
念のため、普段は掛けた事もないチェーンも掛けておいた
この瞬間から
俺とかずくんと子猫は、外界から閉ざされた生活が始まるんだ
そう思ったら、どう表現していいか分からない複雑な気持ちが胸の中を駆け巡っていったのを、感じていた