テキストサイズ

今日も明日も

第68章 見えない鎖 Ⅶ



*********


「いいか?明日朝イチに辛そうな声で会社に電話な」

会社に一度戻り、業務の締めを終えた後

先輩の言う通りに1週間超の食糧と、足りなくなりそうな日用品を買い込んで、アパートまで送って貰った

そして、荷物を玄関まで運ぶのを手伝ってくれながら
明日の事を再確認されている


「大丈夫です。ちゃんとやりますって」

「会社の方は俺が何とかするから。いいな、しつこく言うけど一歩も出るなよ」

「分かりました」

“何かあれば携帯に連絡しろ“

玄関の前に袋を置いて、帰ろうとした先輩に

「お茶でも飲んでってくださいよ」

そう声を掛けたら

「ばーか、弟くんが怯えるだろ」

ヒラヒラと手を振って、先輩はすぐに車へと戻っていってしまった


それもそうか
…かずくんが怯えるよね

あんな話を聞いた後だからか、かずくんの怯えた顔は見たくない

少しでも穏やかに過ごさせてあげたい



ー…先輩、ありがとうございます

見えなくなった先輩に、心の中でお礼を言うと


一度ぱちん、と両頬を叩き

かずくんに悟られないようにしなきゃ、と
自分に気合いを入れ直した

ストーリーメニュー

TOPTOPへ