今日も明日も
第68章 見えない鎖 Ⅶ
「かずくん、この子の名前決まった?」
夕食を食べ終わり、甘めに作ったカフェオレを一緒に飲みながら
再び膝に子猫を乗せているかずくんに笑い掛けた
「あ…、はい」
「なになに?教えて」
「にゃん太、です…」
また随分可愛い名前だ
まあ、変に凝った名前よりは遥かにマシだけど
「変、ですか…?」
窺うように俺を見る目が不安気に揺れる
「ううん。可愛いね、にゃん太かぁ」
“にゃん太“ と膝の上の子猫を呼ぶと、小さく返事をするように “にゃあ“ とひとつ、鳴いた
「ふふ、名前分かるのかなぁ」
「いっぱい、呼びました」
“名前、覚えて欲しくて“
かずくんが目を細め、にゃん太の頭を優しく撫でる
この穏やかな時間が続いて欲しい、と思う
兄の歪んだ呪縛から、かずくんを解放してあげたい
…ただ、気になるのは
かずくんが兄から本当に離れたいのかが見えない事だ
帰りたくない、とも
帰る、とも言わないかずくんの真意が分からない
あれだけ長い間監禁されていて、精神を壊されかけたかずくんが
兄しか縋る人がいなかったかずくんが
…本当に兄から離れたいと願ってるんだろうか