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今日も明日も

第68章 見えない鎖 Ⅶ



とりあえずは明日からの1週間

24時間一緒にいるのは、元気になってからは初めての時間だ

かずくんと一緒にいられるのは、不謹慎だけど楽しみでもある

ただ、かずくんには何て言おうか

幼く感じるとは言え、やっぱり子どもじゃないから下手な嘘は通じないだろう

だけど今、正直に兄の事を持ち出すのは躊躇われる

だって万が一、これでかずくんが “帰る“ などと言い出したら
俺には引き止めるだけの術がないんだから


多分かずくんにとっての俺は

置き去りにされた自分を助けてくれた優しい人、でしかなくて

それ以上でも以下でもない存在で

…もっとかずくんの心の中に俺が入り込まなければ

そう簡単に、兄の歪んだ愛情からかずくんが逃れられるとは思えないんだ




「まーくん…?」
ふいにかずくんが俺の顔を覗き込んだ

「え、あ、なに?」

「…何か、あったんですか?」


かずくんからそんな事を聞かれたのは初めてだ

「何もないよ。どうして?」
少しだけ動揺してしまって、取り繕うように笑ってごまかすと

「怖い顔…してる」
かずくんが怯えた顔を見せた

もしかしたら、かずくんは何か感じ取ってるのかもしれない


「ごめん、大丈夫だよ」
悟られてはいけない

そう願いながら、かずくんの髪を優しく撫でた


to be continue…

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