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今日も明日も

第69章 sweet trap



どこで…見かけたんだっけ?

健康そうに日焼けした肌
目尻に皺を寄せたくしゃっとした笑顔

“もう大丈夫だよ“

何故か耳に残る、…だけど決して不快ではない声



「うーん、分かんない」

「なにが?」

「いや、何処かで会ってない?」

「何それ、逆ナン?」

「は?違うし」


今、目の前でニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべる奴が、すっと手を俺の頬を撫でた

「何すんだよ」

まさか触られるとは思わないから、慌ててその手を払い除ける

「ん?可愛いなと思って」

だけど全く動じないこいつは、相変わらずニコニコしたままで

「男に可愛いとか、ありえない」

「えー、にのは可愛いよ」

何でこいつは俺を “にの“ と呼んでるんだろう

そりゃ確かに、友達はそう呼ぶ奴が多いけど
…その前に、こいつは友達なんかじゃない



駅のホームで、勢い良く走ってきたこいつに激突されたのは2時間前

反動で盛大に尻餅をついた俺は、その拍子にコンタクトを落としてしまって

場所が場所だけに落ちたそれを見つける事は敵わず、片方のコンタクトで何とか視界を保ちながら、

コンタクトを弁償する、と言ったこいつに
俺も遠慮なく買って貰う事にしたんだっけか

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