今日も明日も
第71章 アナタは誰のもの?
頬に置かれた手をぺしっと払い除けて
「うるさい」
椅子から立ち上がり、場所を変えようと相葉さんの横をすり抜けようとした瞬間
「うわっ」
ぐいっと腕を引かれ、あっという間に相葉さんの胸に抱き込まれてしまった
ふわりと香る、甘い香り
誕生日に俺が上げた、シトラス系の香水のそれ
同じのを俺も付けているのに、相葉さんから香るそれは何故か心地好い
だけど
抱き締められるってのは朝っぱらからなんてよろしくなくて
「何してんの…離せってば」
「何で?」
「だって…スーツ、皺になる。出かけるんだろうが」
今日、こいつがこの格好をしてるのは
実家に大事な用事があるからだ
弟が結婚するっつーから、家族の顔合わせに行くからで
こんな、ふざけてる時間なんかないっての
だって
こいつの実家まで、運転するのは俺
…と言うのは
酒が出る=祝いの席で断りにくい
だけど泊まりは仕事の都合上無理
だからと言って電車なんかに乗れば、気付かれたら大変な事になるのは目に見えている