トクベツ、な想い
第11章 11
「…ごめん」
あれから数日経った会社の昼休み
俺は公共スペースにその子を呼んで
設置されたソファに一緒に座り、頭を下げた
頑張ってくれたのにはっきり言うことができず
挙げ句の果てに、潤への想いを隠す為…利用した
申し訳ない気持ちを一心に込めて
「…やっぱり、ダメでした…ね」
吐息混じりの笑い声を漏らしていた
どんな顔をさせてしまっているのだろう…
そう思っても頭を上げることができなかった
その後、相談してもらったお礼を言いにEA部へ来たと潤が言っていた
もういいのだと菓子折りまで持って
ホントにきちんとした子だと思う
お金とか家柄とか関係なく、人として1人の女の子として
でもごめん、俺は潤を選んだ
女の子と付き合うよりリスクが高いと分かっていても
男の潤を、選んだ
心が求めた
こんなこと思ってるのちょっと恥ずかしいんだけど…
ホントにこれは運命なんじゃないかなって
そう思わざるを得ないんだ…
きっと見付かる
いつか素敵な君にも、運命の王子様が現れますように…
ー6月、少し降っただけで梅雨入りだと発表された
毎年思う、言うのが早すぎるんじゃないかと
雨なんか全然降ってないじゃんか…
「櫻井さん、珈琲いかがですか?」
「お、ありがと」
「いえ」
にっこり笑ってコップを置いていった
他の社員にも聞いて回っている
あの返事の後から俺とみゆちゃんは元の先輩後輩として良い関係を築いていた
直後は切ない顔を見せていたが時が経つのは怖いもので
これで…良かったんだと思う
俺と潤の様子はというと
「先輩!頼まれてたやつあがりましたよー」
廊下からの声に慌ててデスクから離れ、足早にそこへ向かう
「おまっ…声でかいっつの」
「あはは、はいこれ」
紙を受け取りお礼を言うと、耳元で潤が囁いた
「今日行くね」
「…っ」
顔を赤くした俺を、潤はニカニカと見て仕事場に戻っていった
実は少し変わったことがある
お互いの部屋へ飲みに行くのは前と変わらないんだけど
変わったのは飲んだ後
恋人になったと自覚し合って、泊まるようにもなって…
潤がその先の展開を求めてくるようになった