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トクベツ、な想い

第12章 12








目を開けると隣にいたはずの潤はいなくて

一瞬、帰ってしまったのかと思ったけど
寝室のドアの向こうで音が聞こえたから一安心した


むくりと起き上がり頭を掻きながら寝室のドアを開ける



「あ、翔くんおはよ」


「…はよ…」



テーブルに皿を置く潤と丁度鉢合わせ、挨拶が交わされる

昨日の気まずさはないように感じた


潤の作ってくれたフレンチトーストを食べて、食べ終わった食器を片付けてくれてる間に俺は新聞を読んで…

昨夜のことには触れてくれるなってくらい、いつも通り…


これはやっぱり…触れない方がいいんだよな?









ーあの一件以来、俺達は普通なんだけど普通じゃない


どっちかの部屋に行って飲んで、肌に触れて…

口論になってしまった日、俺だけ気持ち良くなって出してしまったことが罪悪感で

今では俺も、潤のを触るようになっていたけど


出し合ったら先に進むことはなく…そこ止まり


次の段階へはいけないでいた


お互いに何も言わないけど
きっとまた口論になって気まずくなるのを避けてる


いわゆる、タブーってやつだ


どっちが下は口に出すべからず

新な暗黙ルールが2週間以上続いていた



…覚悟はできてると思ってた

一体なんの…薄っぺらな覚悟だった


手順を読んでたって実際は怯えてただけ…なんだそれ

する側もされる側も…どんなんか、気にはなるけど


別に繋がんなくたって俺らは恋人だって…


…まだお互いの全部を欲しがるのは、早すぎたんだよ




そんなことを考えながら顔は真剣そのものでパソコンに向き合っている

画面には先方に宛てた堅苦しい文章のメール



「後は上司に確認してもらって、と」



んーと背中を反らして両腕を上に突き上げた


今は数人が残って仕事を進める残業時間

最近やたら忙しさを増して、でも潤に会えてないわけじゃない

回数が減りつつあるだけ
しょうがないことなんだけど…少し寂しいのは否めない


会社でだって常に会えるわけじゃないしな



「櫻井、ちょっと休憩に一服どう?」


「俺、今日分終わりー」


「まじかよ…早いな」


「まぁ俺にかかれば、待田は後どんくらい?」



ふふんと得意気に笑って

仕事の進み具合を話す待田の言葉を、帰り支度をしながら聞いた


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