
トクベツ、な想い
第14章 14
みゆちゃんが真剣な顔をする
「…まだ入って間もない子が、他の部署の人の苗字と顔を一致させてるっておかしくありませんか?」
「おかしい…か…」
「私も回ってきた噂でしか知りませんけど…
もう何人かの上司がその子にメロメロで、だからどうって言われても分からないですけど…普通の子じゃ、ないと思います」
同じ部だから知ってるのかもしれないけど
一応潤にも…なるべく早く話そうと思った
ー12時の昼休憩
コンビニ袋の代わりに小さい袋を握った俺の手を不思議そうに見つめる待田
「…何それ、爆弾?」
「弁当だよ」
「まじ!?」
食堂一体に響いてたまらず頭をひっぱたいた
「ばかっ声でかすぎだわ」
「だって…長いことお前といてこんな光景初めてなんだもん…」
「…まぁそうだけどさ」
袋から容器を出し、上のフタを開けると待田がガン見して
「めっちゃうまそうじゃん」
「…だな」
俺もビックリした
朝早かっただろうにちゃんと綺麗に盛り付けてあって…
きっと俺んとこの冷蔵庫にあるものだけじゃ足りなくて
朝、自分んとこから食材持ってきたんだろうな
だってうちにはニンジンだってレタスだって…そら豆なんてあるはずないし
潤の努力が見えた
「俺の定食と交換しようぜ」
「やんねーよ」
「ケチー」
「彼女にやってもらえばいいじゃん」
「俺の彼女あんま料理できないんだよ…」
「…そっか」
だからって同情するはずもなく
備え付けてあった箸を出すと卵焼きを口に運んだ
「うまっ」
「うわーもう俺、お前と食いたくねぇよー」
「いいじゃん、定食だっておばちゃんの手作りだろ?」
「おばちゃんと彼女は違う~」
泣き真似をする待田をほっといて弁当を食べ進めていると俺達の席にあの子が来た
「…あの」
「あ…えーっと…葵ちゃん!」
「はい」
さすが女性情報には一段と敏感な待田さん
その"葵ちゃん"が俺に向かってピンクの袋を突きだしてきた
「…え?」
「良かったら…食べて下さい」
「あー…ごめん、気持ちだけで」
「こいつ今日、彼女の作った弁当なんだよー
もったいないから俺にちょうだい?」
「彼女さん…そうですよね…」
