
トクベツ、な想い
第14章 14
待田を無視して俺達から離れていった
また泣き真似をする待田の肩に手を置いていると
彼女の歩いて行った先に潤が見えた
「え…」
会話は聞こえないけど気になって、その様子を凝視する
潤は数人の男性社員と定食を食べていて
そこに彼女が近寄ると全員不思議そうな顔をしていた
俺にしたように弁当を潤へ差し出してる
潤は笑いながらイヤイヤと手を揺らす
すると葵ちゃんは袋から弁当を出し、フタを開けてテーブルに置いていた
潤と他の男性達はおぉーと声を上げ中身を見ている
そう…そうだよな
潤だってホントはもらった方が嬉しいよな
作るのが好きって言ったって…
次の瞬間、彼女の手が潤の肩に触れた
俺はガタッとイスから立ち上がり、眉間に皺を寄せた
目の前がグラついて…苛立った
パパッと弁当を食べ終えると弁当箱を持ち
まだ食べてる途中だった待田を置いてその場から離れた
「っあ…おい!」
背中で声を受けるけど、足を止めなかった
また前の状態に逆戻りしたかのように喫煙室に入る
吸わなかったが持ってはいたタバコを出して火をつけた
「…っあーくそ…」
苛々しながら吸っていると、置いてったはずの同僚が入ってきた
「情緒不安定だな、お前」
「…そうかも…悪い…」
「いいけど…タバコやめたんじゃねぇの?」
「今だけ解禁」
「なんだそれ」
待田も吸い出し、向かい合わせに置いてあったパイプイスにお互い座ると
話す内容も大してないのに、適当に合わせ付き合ってくれた
ちょっと笑い合えるようになって心が落ち着きをとり戻す
肩に触ったぐらいで吸ってたんじゃタバコに一生解放されねぇな…
「ふー…葵ちゃん…お前に気あるのな…」
「…違うと思うけど」
「だって弁当ってさ」
「俺だけじゃねぇよ、みゆちゃんが言ってた」
「そうなの!?」
あれ…あぁ危ない人にだけ言ってるのか…
「もしかして松本くんも入ってんの?」
「…みたい」
「ちくしょー羨ましー」
「彼女に言うぞ」
「まじ勘弁」
煙を吐き出し笑うとタバコを押し消した
あの弁当どうしたんだろと頭の片隅で思って2本目に指をつける
…いや、やめとこう
「先戻る」
「うぃー」
