トクベツ、な想い
第14章 14
喫煙室から出て、重い足取りでフロアを歩いた
「櫻井さん」
向かおうとした先に葵ちゃんは立っていた
誰がどう見ても可愛い
だけど俺にはもう苛付きの根元でしかない
「…何?」
低い声に不機嫌な顔をして問いてしまう
「さっきはすいませんでした」
「別に…」
「じゃあまた作って…」
「作ってくれる人いるから…やめてくれる?」
もっと優しく接してあげるべきなんだろうけど
潤といる光景がまた浮かび上がってしまって
落ち着かせたはずの感情が沸々と湧き出てくる
「その人のこと…好きなんですね」
「あぁ」
「…羨ましい」
「葵ちゃんならすぐ見つかるって」
目を伏せて彼女の横を通りすぎようとした一瞬
「欲しい…」
透き通る声が冷たく俺の耳に響いて
彼女を越した足を止め、後ろをバッと振り向いた
"魔性の女"がこっちを見て怪しく笑っていた
なんだか怖くなって目が泳いで
自分のデスクまで走った
「…はぁ…なんだ…」
傘を貸した時とは違ったその子に恐怖した
心臓が不安に鼓動を鳴らし
なぜか冷や汗が止まらなかった