トクベツ、な想い
第15章 15
「うんその子だよ、前俺が言ってたの
あれ…でもなんで知ってるの?」
葵ちゃんに怯えた夜、俺は潤の部屋に来ていた
「…前傘貸したって」
「あーはいはい、なるほど
あの子運用のサポートしか今んとこやってないから、翔くんが知ってるなんて…ビックリしちゃった」
え、じゃあこっちに来たことない?
てことは…俺のことを知ってるって、益々おかしいじゃん
「…みゆちゃんから聞いた?」
「いや?…何を?」
本当のとこ彼女がどういう子か知らないのに…憶測だけで、断定できてない噂と嫉妬だけで
悪い子だと決めつけてしまうのはどうなんだ
…って思うけど
「その子が片っ端から気に入った人、自分のものにするって」
「…ふふ、何それ」
だよな、笑うよな…
「でも、翔くんの苗字知ってるってのはちょっと…
普通の子だと思ってたけど…翔くん、目付けられてるようなら気を付けて」
だから気を付けろって何をどうすれば…
まぁとりあえず
「…潤も、気を付けて」
「俺は翔くん一筋だから大丈夫だよ」
「俺だってそうだよ…」
「ふふ」
あの怪しい微笑みは、俺の嫉妬した心が彼女を敵だと勘違いしてそう映しただけなのかもしれない
でも…今笑い合ってるこの状態が、笑えなくなりそうな予感がして胸が騒ぐのは…
「…翔くん?」
「ん?」
「あれ、無意識?」
下、と指を差されてその方向を見れば
潤の服をきゅっと握る俺の手
「あ…悪い」
「何が、悪いことないよ」
その手を引かれて潤の胸板に俺の体が収まった
「大丈夫だよ」
「…うん」
俺の安らげる場所…ずっと…
ー数日が経ったけど特に俺に何があるわけじゃなく
"欲しい…"
あの言葉はなんだったのか
そう…俺に対する変化はない
そうなんだ…でも
EA部に用があって行った時、食堂、帰り…
葵ちゃんは潤にべったりだった
「はぁ…」
自分の部屋のソファにもたれ掛かり
潤に隠れて、またタバコの本数を増やしている
嫉妬心が溢れて止まらない
きっと匂いでこの現状、分かってるんだろうな潤には
「いっそ目の前で叱られれば、やめられるのに」
…無理だな、あの子が潤の傍にいる限り